希望の怪物 現代サブカルと「生きづらさ」のイメージ
田村景子(著/文 他)
四六判 368頁
定価 1,800円+税
ISBN 978-4-305-70976-9 C0095
在庫あり
書店発売日 2023年01月06日 登録日 2022年11月04日
解説
本書は、バブル狂乱の一九八〇年代から、そしてコロナ禍と侵略戦争の現在まで――、この四〇年間たえまなく、きわめて特異で魅力的な怪物を輩出してきたサブカルチャーにおける怪物たちの表象を考察する。
紹介
本書は、きわめて特異で魅力的な怪物を輩出してきたサブカルチャーにおける怪物たちの表象を考察する。
さまざまな怪物たちが、今、フィクションの世界を跋扈している。
人につくられた巨大な破壊神、人間ならざるものと人間との融合、DNA操作をされた特異な身体から、吸血鬼、ゾンビ、殺人鬼、そして人間を侵し社会を侵す疫病神まで。
なぜわたしたちは、かくまでに怪物に魅せられるのか。
正体不明の怪物は、人間にあたえる恐怖によって日常を揺るがし、あたりまえの日常に破滅的な危機がせまるのを知らせる異様な警告者である。
例えば、地震や津波を怪物にみたてることで災厄を意識化させたように。
例えば、疫病の流行に先んじてあらわれる怪物が、疫病を可視化し、衛生状態の改善をうながすように。
例えば、統治を脅かす怪物が、権勢によって滅亡に追いこまれた人々の存在を忘れさせないように。
社会の大変容にわずかに先立ち、または社会の大変容とともに、フィクショナルな怪物たちはくりかえし登場してきた。
本書は、バブル狂乱の1980年代から、1990年代のポスト冷戦の混乱をくぐり、新しい戦争が世界中に広がった2000年代、3月11日の破局からはじまる2010年代、そしてコロナ禍と侵略戦争の現在まで――、この40年間たえまなく、きわめて特異で魅力的な怪物を輩出してきたサブカルチャーにおける怪物たちの表象を考察する。
マンガ・アニメ・ライトノベルなどに描かれた怪物たちは、いかに跳梁し、なにを警告し、その先にいかなる希望を見いだそうとしたのか。それは、世界に変化を求めつづける希望の怪物たちと、「生きづらさ」に苦しみ、なお生きようとするわたしたちとの、かすかで不断な共闘の記録である。
目次
はじめに「生きづらさ」と希望の怪物
1 予兆と警告の出現『巨神兵東京に現わる』
2 巨神兵とともに往く『風の谷のナウシカ』
3 人型爆砕装置『AKIRA』
4 人に寄生し人を問いなおす小怪物『寄生獣』
5 絶望の怪物、希望の怪物 『新世紀エヴァンゲリオン』
6 怪物と怪物が死の村で出会った『屍鬼』
7 破滅をさらにたぐりよせる『夜啼きの森』
8 虚弾こそ乱射せよ『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』
9 わたしたちは、新たな怪物となる『魔法少女まどか☆マギカ』
10 怪物が現れた、怪物とともに変わる『MONSTER』『COPPELION』『進撃の巨人』『東京喰種』『鬼滅の刃』『チェンソーマン』『Final Phase』『リウーを待ちながら』
おわりに 現在と近未来の怪物へ
著者プロフィール
田村景子(タムラケイコ)
田村景子(たむら・けいこ)1980年群馬県前橋市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。早稲田大学大学院博士後期課程修了。博士(学術)。現在、和光大学准教授。主な著書に『三島由紀夫と能楽—「近代能楽集」、または堕地獄者のパラダイス』(勉誠出版)、編・共著に『文豪たちの住宅事情』『文豪東京文学案内』(笠間書院)、監修本として『文豪の家』『文豪の風景 』(エクスナレッジ)など。 上記内容は本書刊行時のものです。
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