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SP盤落語レコードがひらく近代日本語研究

金澤裕之・矢島正浩(編集)

A5判  
定価 4,900円+税
ISBN 978-4-305-70879-3 C0081
在庫あり

書店発売日 2019年09月02日
登録日 2019年08月07日

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紹介

「日本語史の宝の山」である落語は、どのような可能性を有するのか。
明治後期より録音された東京と大阪の落語SPレコードを材料に、言語表現に関してさまざまな角度から分析を進める。
落語資料についての丁寧な紹介・解説から始まり、その言語学的性格に迫る諸論考を配置。今後の研究指標となる日本語史諸分野の成果を収める。


本書の議論を通じて、落語から得られる言語史的情報が、これまでに明らかにされてきた近代日本語の話し言葉史において、時系列的に矛盾なく配置されること、口語資料の1つとして新たな知見を加え得る、固有の価値を有するものであることが確認されることと思う。……落語資料は、それぞれの問題意識を背景とすることによって、無数の利用法が可能である。……まずは本書の試みをきっかけに、近代日本語研究が、自在に、広く展開することを願うものである。(本書「なぜ落語資料なのか—序に代えて」より)


【執筆】
揚妻祐樹・岡部嘉幸・小野正弘・金澤裕之・川瀬卓・金水敏・坂井美日・清水康行・野村剛史・宮内佐夜香・宮地朝子・村上謙・森勇太・矢島正浩

目次

なぜ落語資料なのか—序に代えて●矢島正浩
1.本書のねらい
2.近代日本語資料としての落語
3.本書の構成
4.広がる落語資料の利用可能性


I[解説]録音資料としての落語

1 最初期日本語録音資料史の素描——録音再生装置の開発から出張録音時代まで●清水康行
要旨
1.はじめに
2.録音再生装置の発明
3.蝋管式蓄音機と円盤式蓄音機の開発
4.録音再生装置の日本への紹介
5.欧州で録音された現存最古の日本語録音資料群
6.円盤式蓄音機による最初の日本語録音
7.20世紀初期に録音を残した東京落語家たち
8.最初期落語録音を聴く手段
9.復元再生音の忠実度
10.聞き做しの問題:オバマ広島演説記事を他山の石として


2 SP盤落語レコードとその文字化について●金澤裕之
要旨
1.はじめに
2.SP盤レコードに遺された日本語
3.落語&演説レコードの資料的性格
4.対象とした作品
5.落語レコードの文字化について
6.おわりに


II言語資料としての落語

1 各種録音資料に見る、方向・場所を表す「へ」格と「に」格●金澤裕之
要旨
1.はじめに
2.これまでの研究状況
3.録音資料における「へ」格と「に」格の出現状況
4.資料の全体から窺える特色
5.詳細な部分の検討
6.おわりに


2 近世江戸語における指定表現の否定形—近世上方語および近代東京語・京阪語との比較●岡部嘉幸
要旨
1.はじめに
2.調査対象と調査資料
3.近世語における指定表現の否定形態の実態
4.近代語における指定表現の否定形態の実態
5.まとめと今後の課題


3 SP盤落語レコード資料に用いられた語彙の「近代性」●小野正弘
要旨
1.はじめに
2.方法
3.分析と考察
4.おわりに


4 東京落語と「標準語」●野村剛史
要旨
1.落語速記録
2.「標準語」とは
3.東京落語と標準語
4.速記録の資料性


5 落語の「会話」と「地」の東西比較——接続辞使用傾向から見るスタイル●宮内佐夜香
要旨
1.はじめに
2.先行研究
3.本稿の目的
4.調査について
5.各地域・各文体における傾向
6.地のスタイルの実態
7.おわりに


6 大阪落語SP盤文字化資料における「。」の加点状況——文のあり方を探る●村上謙
要旨
1.はじめに——落語の文構造にせまる
2.調査方法と注意点  
3.調査結果
4.上位3項目の分析
5.第4位の項目について
6.その他の項目について
7.「。」を加点してもよさそうなのに加点されていない場合について
8.落語の資料性
9.最後に


7 文体面から見た偶然確定条件の諸相——落語SPレコード・『夢酔独言』・尾崎紅葉の言文一致体小説を中心に●揚妻祐樹
要旨
1.はじめに
2.明治後期〜大正期落語SPレコード資料の偶然確定条件
3.江戸語・東京語の偶然確定条件——『無酔独言』を中心に
4.尾崎紅葉の言文一致体小説における偶然確定条件
5.まとめ


III 日本語史における落語

1 SP盤落語レコード資料における人の存在文●金水敏
要旨
1.はじめに
2.金水(2006)の整理
3.大阪落語の調査
4.東京落語の調査
5.統計と東西の比較


2 SP盤落語資料のダケ・バカリ●宮地朝子
要旨
1.はじめに
2.バカリの歴史概観
3.SP盤落語資料のバカリとダケ
4.近代期のバカリ・ダケとSP盤の位置づけ
5.おわりに


3 上方語と江戸語の準体の変化——2つの変化の相違点と共通点●坂井美日
要旨
1.はじめに
2.先行研究と問題点の整理
3.本論の枠組み
4.データ
5.上方語と江戸語の対照


4 不定の「やら」「ぞ」「か」の東西差と歴史的推移●川瀬卓
要旨
1.問題の所在
2.近世後期における不定の助詞
3.明治大正期落語SPレコードにおける不定の助詞
4.助詞使用の地域差と副詞、副助詞の形成との関連性
5.上方・大阪語における不定の助詞の歴史的推移とその背景
6.まとめ


5 近代落語資料における行為指示表現の東西差——上方・大阪と江戸・東京の指向性の異なり●森勇太
要旨
1.はじめに
2.研究の枠組み
3.落語の行為指示表現の東西差
4.落語に見られる行為指示表現の解釈
5.まとめ


6 近代落語資料における順接条件系の接続詞的用法について●矢島正浩
要旨
1.はじめに
2.矢島(2013・2016b)より
3.調査資料における使用状況
4.接続詞的用法の詳細
5.接続詞的用法の使用状況
6.おわりに


あとがき 金澤裕之

著者プロフィール

金澤裕之・矢島正浩(カナザワヒロユキ ヤジママサヒロ)
【編者略歴】
金澤裕之(かなざわ・ひろゆき) 目白大学外国語学部教授、横浜国立大学名誉教授
著書・論文 『大正・昭和戦前期 政治・実業・文化 演説・講演集 SP盤レコード文字化資料』(共編、日外アソシエーツ、2015)、「録音資料による近代語研究の今とこれから」『日本語の研究』11-2(2015)、『SP盤演説レコードがひらく日本語研究 言語文化をどう捉えるか』(共編著、笠間書院、2016)

矢島正浩(やじま・まさひろ) 愛知教育大学教育学部教授
著書・論文 『近世語研究のパースペクティブ 言語文化をどう捉えるか』(共編著、笠間書院、2011)、『上方・大阪語における条件表現の史的展開』(笠間書院、2013)、「タラ節の用法変化」『国語国文学報』76(2018)


【執筆者略歴】(五十音順)
揚妻祐樹(あげつま・ゆうき) 藤女子大学文学部教授
論文 「肉声の語り 尾崎紅葉『伽羅枕』における「発話」「心話」「地」の処理」『藤女子大学国文学雑誌』95(2016)、「時代小説におけるノデアッタ・ノダッタ」『形式語研究の現在』(和泉書院、2018)、「尾崎紅葉『金色夜叉』の〈語り〉 演劇的な〈語り〉」盛岡大学『日本文学会誌』31(2019)

岡部嘉幸(おかべ・よしゆき) 千葉大学大学院人文科学研究院教授
論文 「現代語からみた江戸語・江戸語からみた現代語 ヨウダの対照を中心に」『近世語研究のパースペクティブ 言語文化をどう捉えるか』(笠間書院、2011)、「「非情の受身」のバリエーション 近代以前の和文資料における」『バリエーションの中の日本語史』(くろしお出版、2018)、「洒落本の江戸語と人情本の江戸語 指定表現の否定形態を例として」『国語と国文学』96-5(2019)

小野正弘(おの・まさひろ) 明治大学文学部教授
著書 『日本語オノマトペ辞典』(編著、小学館、2007)、『日本近代語研究 6』(共編著、ひつじ書房、2017)、『くらべてわかるオノマトペ』(東洋館出版、2018)

川瀬卓(かわせ・すぐる)白百合女子大学文学部准教授
論文 「前置き表現から見た行為指示における配慮の歴史」『歴史語用論の方法』(ひつじ書房、2018)、「副詞「どうやら」の史的変遷」『語文研究』124(2017)、「副詞「どうぞ」の史的変遷 副詞からみた配慮表現の歴史、行為指示表現の歴史」『日本語の研究』11-2(2015)

金水敏(きんすい・さとし) 大阪大学大学院文学研究科教授
著書 『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』(岩波書店、2003)、『日本語存在表現の歴史』(ひつじ書房、2006)、『文法史』シリーズ日本語史3(共編著、岩波書店、2011)

坂井美日(さかい・みか) 日本学術振興会特別研究員
論文 「上方語における準体の歴史的変化」『日本語の研究』11-3(2015)、「甑島方言の格について」『鹿児島県甑島方言からみる文法の諸相』(くろしお出版、2019)、「熊本市方言の格配列と自動詞分裂」『日本の格標示と分裂自動詞性』(くろしお出版、2019)

清水康行(しみず・やすゆき) 日本女子大学文学部教授
著書・論文 『円朝全集』全13巻+別巻2冊(共編、岩波書店、2012-2016)、「今世紀初頭東京語資料としての落語最初のレコード」『言語生活』372(1982)、「1903年二月録音の東京落語平円盤資料群について」『国語と国文学』79-8(2002)

野村剛史(のむら・たかし) 東京大学名誉教授
著書 『話し言葉の日本史』(吉川弘文館、2011)、『日本語スタンダードの歴史 ミヤコ言葉から言文一致まで』(岩波書店、2013)、『日本語「標準形」の歴史 話し言葉・書き言葉・表記』(講談社、2019)

宮内佐夜香(みやうち・さやか) 中京大学文学部准教授
論文 「近世後期における逆接の接続助詞について 上方語・江戸語の対照」『中京大学文学会論叢 1』(2015)、「逆接確定条件表現形式の推移についての一考察 中世後期から近世にかけて」『日本語文法史研究 3』(ひつじ書房、2016)

宮地朝子(みやち・あさこ)名古屋大学大学院人文学研究科教授
著書・論文 『日本語助詞シカに関わる構文構造史的研究 文法史構築の一試論』(ひつじ書房、2007)、『ことばに向かう日本の学知』(共編著、ひつじ書房、2011)、「日本語史研究と文法性判断」『日本語文法』17-2(2017)

村上謙(むらかみ・けん) 関西学院大学文学部教授
論文 「近世上方における二段活用の一段化とその後の展開」『国語と国文学』93-5(2016)、「近世語研究の学史的展開」『近代語研究 第18集』(武蔵野書院、2015)

森勇太(もり・ゆうた) 関西大学文学部准教授
著書・論文 『発話行為から見た日本語授受表現の歴史的研究』(ひつじ書房、2016)、『ワークブック 日本語の歴史』(共著、くろしお出版、2016)、「中世後期における依頼談話の構造 大蔵虎明本狂言における依頼」『歴史語用論の方法』(ひつじ書房、2018)

上記内容は本書刊行時のものです。

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