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江戸時代の社会・風俗がわかる 浮世草子大事典

長谷川 強(監修) / 『浮世草子大事典』編集委員会(編)

B5判  1024頁 上製
定価 20,000円+税
ISBN 978-4-305-70847-2 C0591

奥付の初版発行年月 2017年10月
書店発売予定日 2017年10月02日
登録日 2017年08月31日

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紹介

江戸の人々と社会をいきいきと描いた当時の流行文芸から、本当の江戸時代がわかる!
人気作家の誕生は商業出版を生み、時代を観察する態度はジャーナリズムをはぐくみ、人々は夢中になった。
井原西鶴『好色一代男』にはじまり、その斬新さ、面白さで衝撃をもって迎えられた一大ジャンル「浮世草子」。日常生活から怪異まで幅広い素材を取り入れながら、江戸時代中期の上方を中心とした世態風俗を描き出した。
当時の人々の生活と思想についての史料の宝庫である「浮世草子」、ほぼ全作品を収録。初紹介多数の梗概と、豊富な挿絵[584点]で、知られざる江戸の姿が今ここによみがえる。
歴史、言語、演劇、風俗、社会、美術等々、さまざまの分野に必備の事典、ついに登場です!。
【推薦】浜田啓介[京都大学名誉教授]、林 望[作家・国文学者]、氏家幹人[歴史学者]。

■本書の6つの特色
1.事項編(19項目)で浮世草子をとりまく周辺を詳しく解説する。参考文献も掲載。
2.人名編[作者・版元/挿絵師](30項目)で、主要作者、版元、挿絵師がわかる。参考文献も掲載。
3.作品編(519項目)は、作品のストーリー(梗概)、特色のほか、作者・出版年・版元など関連する事項を網羅する。参考文献も掲載。
4.挿絵584点を掲載。各挿絵には解説、描かれた事物をキーワードとして付し、何が描かれているかわかる。
5.挿絵については、キーワード索引[50音順]のほか、カテゴリー別索引を付した。カテゴリーは、①怪異・伝説②芝居・興行③商売・産業④道具・建物⑤風俗⑥武士⑦遊里、を設けた。描かれた風俗を簡単に引くことができる。
6.年表[1682〜1786年]を掲載。作品を刊行年順に並べ、社会一般事項、同時代の散文作品、戯曲を併記し、時代背景を立体的に把握できるようにした。

監修、長谷川強。編者、『浮世草子大事典』編集委員会(江本 裕、神谷勝広、倉員正江、佐伯孝弘、篠原 進、杉本好伸、中嶋 隆、藤原英城)。執筆者、阿比留章子・阿部紘子・網野可苗・飯倉洋一・石上阿希・石塚修・市毛舞子・一戸渉・糸川武志・井上和人・岩谷薫・上野左絵・空井伸一・有働裕・大木京子・大久保順子・岡島由佳・小田島由佳・勝又基・加藤裕一・河合眞澄・河村公康・川元ひとみ・菊池庸介・木越治・木越秀子・北川博子・木村迪子・木村萌・久保田篤・紅林健志・近衞典子・近藤瑞木・近藤仁美・坂越さやか・佐藤悟・佐藤智子・宍戸道子・島田大助・末柗昌子・杉本和寛・杉本紀子・鈴木千惠子・染谷智幸・高島要・高橋明彦・髙橋柳二・高松亮太・立道千晃・田中則雄・堤邦彦・長澤麻衣子・長友千代治・中村隆嗣・畑中千晶・花田富二夫・羽生紀子・濵口順一・浜田泰彦・早川由美・速水香織・檜山裕子・平林香織・福田安典・藤井史果・藤川雅恵・藤沢毅・松村美奈・丸井貴史・三浦一朗・三栖隆介・水谷隆之・南陽子・宮澤照恵・宮本祐規子・武藤純子・森耕一・森田雅也・山本卓・山本ゆかり・山本綏子・義田孝裕・吉丸雄哉・渡邉さやか。

目次

序(長谷川強)
凡例

1 事項編
浮世草子概説
浮世草子挿絵
遊里所と初期好色本
初期好色本
在外好色本
役者評判記
遊女評判記
西川三巻本等春本
風俗絵本
噺本・談義本
浮世草子と出版界
幕府の出版統制と浮世草子
後続文学への影響(草双紙)
後続文学への影響(読本・滑稽本・考証随筆等)
演劇との交流
浮世草子と奇談
貸本と浮世草子
国語学から見た浮世草子(文法)
国語学から見た浮世草子(表記・語彙・文体)

2 人名編
○作者・版元
井原西鶴
北条団水
西鶴本の書肆
西村市郎右衛門(西村本)
山の八(山本八左衛門)
八文字屋の代々
西鶴本・八文字屋・吉文字屋以外の書肆
夜食時分
林義端
石川流宣
桃林堂蝶麿
西沢一風
都の錦
青木鷺水
江島其磧
未練
月尋堂
錦文流
多田南嶺
大雅舎其鳳
永井堂亀友
上田秋成
増谷大梁・半井金陵
○挿絵師
蒔絵師源三郎
吉田半兵衛
菱川師宣とその門流
西川祐信とその門流
奥村政信とその門流
鳥居清信とその門流
川島信清
大森善清

3 作品編
【あ】
愛敬昔色好/愛護初冠女筆始/愛楽毬八代物語/赤烏帽子都気質/赤染衛門綾輦/商人家職訓/商人軍配団/阿漕浦三巴/浅草拾遺物語/㬢太平記/飛鳥川当流男/吾妻男仙伝枕/敦盛源平桃/安倍晴明白狐玉/嵐は無常物語/一角仙人四季桜/今川一睡記/今源氏空船/今なりひら物語/今昔九重桜/今昔出世扇/今昔私儘形気/今様二十四孝/時勢花の枝折/色里三所世帯/色縮緬百人後家/色の染衣/色ひいな形/女男伊勢風流/女男色遊/浮世壱分五厘/浮世栄花一代男/浮世親仁形気/浮世祝言揃/浮世町人形気/薄紅葉/薄雪音羽瀧/哥行脚懐硯/裏甲/牛の角文字/宇津山小蝶物語/梅桜一対奴/雲州松江の鱸/栄花遊二代男/焰魔大王日記幉/奥州軍記/大系図蝦夷噺/沖津白波/御伽厚化粧/御伽空穂猿/御伽太平記/御伽名題紙衣/御伽人形/御伽比丘尼/御伽百物語/御伽平家/小野篁甘露雨/小野篁恋釣船/面影曽我傾城盛衰記/女曽我兄弟鑑/女大名丹前能/女俠粲花形/女非人綴錦/女将門七人化粧/女武者修行/
【か】
怪醜夜光魂/怪談御伽桜/怪談はらつづみ/香がかほり/柿本人麿誕生記/陽炎日高川/加古川本艸綱目/籠耳/籠耳覚日記/花実御伽硯/花実義経記/敵討浮田物語/敵討笈花蔓/敵討会稽錦/敵討天神利生記/鎌倉諸芸袖日記/鎌倉武家鑑/棠大門屋敷/刈萱二面鏡/河洲内助渕物語/寛濶曽我物語/寛濶大臣気質/寛濶平家物語/寛濶役者片気/寛濶鎧引/勧進能舞台桜/関東名残農袂/鬼一法眼虎の巻/義経倭軍談/其磧置土産/其磧諸国物語/吉日鎧曽我/教訓私儘育/京縫鎖帷子/記録曽我女黒船/金玉ねぢぶくさ/近士武道三国志/近代長者鑑/近代艶隠者/禁短気三編/禁短気次編/楠軍法鎧桜/楠三代壮士/楠素人軍談/南木莠日記/熊谷女編笠/熊坂今物語/雲のかけはし/傾城洗髪/けいせい色三味線/けいせい請状/けいせい哥三味線/契情お国歌舞妓/けいせい折居鶴/けいせい竈照君/契情刻多葉粉/けいせい伽羅三味線/傾城禁短気/けいせい盃軍談/傾城仕送大臣/けいせい新色三味線/傾城銭車/傾城戦国策/契情太平記/傾城辻談議/けいせい伝受紙子/傾城難波みやけ/傾城播磨石/けいせい風流杉盃/傾城武道桜/契情蓬萊山/月華通鑑/兼好一代記/賢女心化粧/鎌倉比事/源平㬢軍配/元禄曽我物語/元禄大平記/孝行娘袖日記/好色あを梅/好色赤烏帽子/好色伊勢物語/好色一代男/好色一代女/好色入子枕/好色浮世男/好色姥桜/好色産毛/好色江戸紫/好色閻魔歌舞伎(役者小夜衣)/好色おとぎぼうこ/好色影倣子/好色河念仏/好色かんたむの枕/好色堪忍記/好色堪忍ぶくろ・好色堪忍破袋/好色桐の小枕/好色小柴垣/好色五人女/好色三代男/好色三人紅/好色四季咄/好色しなの梅/好色渋団扇/好色十二人男/好色酒天童子/好色盛衰記/好色俗むらさき/好色染下地/好色大神楽/好色大黒舞/好色大福帳/好色旅日記/好色智恵袋/好色艶虚無僧/好色床談義/好色歳男/好色難波男/好色日用食性/好色敗毒散/好色破邪顕正/好色春の明ぼの/好色美人角力/好色一もと薄/好色文伝受/好色不老門/好色増鏡/好色又寝の床/好色まつばやし/好色万金丹/好色むすび昆布/好色忘花/興廃妹背山/高名太平記/五ヶの津余情男/国姓爺明朝太平記/古今堪忍記/古今武士鑑/御前於伽/後前可笑記/御前義経記/御前独狂言/国花諸士鑑/御入部伽羅女/魂胆色遊懐男/魂鍛金衣鳥/婚礼名護屋吾妻日記/
【さ】
西海奇談/西海太平記/西鶴置土産/西鶴織留/西鶴諸国はなし/西鶴俗つれづれ/西鶴伝授車/西鶴名残の友/西鶴冥途物語/西行諸国噺/彩色歌相撲/最明寺殿諸国物語/逆沢瀉鎧鑑/魁対盃/咲分五人媳/開分二女桜/桜曽我女時宗/咡千里新語/座敷歌舞伎/真盛曲輪錦/小夜嵐物語/小夜衣/小夜衣/猿源氏色芝居/三千世界色修行/色道大鼓/色道小鏡/色道懺悔男/色道修行男/色道宝船/色道七ふしぎ/二休咄/色欲年八卦/地獄楽日記/自笑楽日記/子孫大黒柱/下谷桂男/実話東雲烏/芝居万人葛/嶋原大和暦/四民乗合船/拾遺御伽婢子/十二小町㬢裳/出世握虎昔物語/潤色栄花二代娘/潤色栄花娘/諸商人世帯形気/正月揃/上代女敵討実録/笑談医者質気/小児養育質気/商人職人懐日記/諸艶大鑑/諸家軍配記/諸芸独自慢/諸国因果物語/諸国此比好色覚帖/諸国心中女/諸国武道容気/諸道聴耳世間猿/諸訳名女多葉粉/白闇色挑灯/新薄雪物語/新御伽婢子/新鑑草/新可笑記/新好色文枕/真実伊勢物語/心中大鑑/心中恋のかたまり/新色五巻書/新色三ツ巴/新撰大団扇/新玉櫛笥/新竹斎/神農花合戦/新武道伝来記/新平家物語/新吉原つねづね草/世間御旗本容気/世間学者気質/世間侍婢気質/世間自慢顔/世間姑気質/世間旦那気質/世間長者容気/世間妾形気/世間手代気質/世間仲人気質/世間化物質気/世間母親容気/世間子息気質/世間娘気質/世間胸算用/世上智恵袋/善悪身持扇/善悪両面常盤染/宗祇諸国物語/草木軍談賤爪木/曽我鎌倉飛脚/俗枕草紙/曽根崎情鵲/
【た】
大尽三ツ盃/大内裏大友真鳥/太平色番匠/太平記秘説/太平百物語/高砂大嶋台/誰袖海/忠盛祇園桜/龍都俵系図/伊達髪五人男/玉櫛笥/多満寸太礼/玉箒木/壇浦女見台/丹波太郎物語/丹波与作無間鐘/千尋日本織/忠義太平記大全/忠義武道播磨石/忠孝永代記/忠孝寿門松/中将姫誓糸遊/忠臣略太平記/昼夜用心記/長者機嫌袋/珍術罌粟散国/陳扮漢/通俗諸分床軍談/徒然時勢粧/庭訓染匂車/手代袖算盤/儻偶用心記/道成寺岐柳/当世御伽曽我/当世乙女織/当世銀持気質/当世芝居気質/当世信玄記/当世宗匠質気/当世誰が身の上/当世智恵鑑/当世鳥の跡/当世行次第/当流曽我高名松/歳徳五葉松/渡世商軍談/渡世伝授車/渡世身持談義/
【な】
情ひな形/那智御山手管瀧/浪花田鶴/菜花金夢合/雷神不動桜/男色今鑑/男色大鑑/男色哥書羽織/男色木芽漬/男色義理物語/男色子鑑/男色比翼鳥/男色十寸鏡/男女武道筏/日本永代蔵/日本契情始/日本好色名所鑑/日本新永代蔵/日本桃陰比事/俄仙人戯言日記/農民太平記/
【は】
初音物語/花重連理 /花色紙襲詞/花襷厳柳嶋/花の名残/花楓剣本地/播磨椙原/春駒大内鞚/美景蒔絵松/秘事枕親子車/一夜船/貧人太平記/百性盛衰記/風俗傾性野群談/風俗誹人気質/風流足分船/風流東鑑/風流東大全/風流行脚噺/風流今平家/風流宇治頼政/風流梅のかほり/風流扇子軍/風流鏡が池/風流鎌倉土産/風流川中嶋/風流勧進能/風流曲三味線/風流呉竹男/風流軍配団/風流傾国能言/風流源氏物語/風流源平浮世武寿子/風流好色十二段/風流御前二代曽我/風流西海硯/風流嵯峨紅葉/風流三国志/風流仕形舞/風流仕出男/風流酒吸石亀/風流神代/風流宝文箱/風流茶人気質/風流連三味線/風流庭訓往来/風流東海硯/風流友三味線/風流七小町/風流虫合戦/風流誮軍談/風流誮平家/風流日本荘子/風流夢浮橋/風流連理■/福徳過報噺/武家義理物語/富士浅間裾野桜/舞台三津扇/武道一覧/武道色八景/武道近江八景/武道継穂梅/武道伝来記/武道張合大鑑/懐硯/武遊双級巴/文武さざれ石/文武酒色財/弁説叩次第/宝永千歳記/宝永忠信物語/本朝桜陰比事/本朝女二十四貞/本朝会稽山/本朝三筆伝授鑑/本朝諸士百家記/本朝智恵鑑/本朝二十不孝/本朝浜千鳥/本朝蟇物語/
【ま】
三浦大助節分寿/乱脛三本鑓/都鳥妻恋笛/京略ひながた[十二/段]/昔女化粧桜/息子浮世狂/名玉女舞鶴/名玉天地説/名玉天地説外篇/名槌古今説/名物焼蛤/女敵高麗茶碗/滅多無性金儲気質/物部守屋錦輦/盛久側柏葉/
【や】
役者色仕組/野傾咲分色孖/野傾旅葛籠/野傾友三味線/優源平歌嚢/略平家都遷/八棟大嶋台/野白内証鑑/山路の露/倭織錦船幕/遣放三番続/野郎文反古/夕かほ利生草/夕霧有馬松/遊女懐中洗濯/遊里様太鼓/遊貴之衣司香/弓張月曙桜/遊眼噺不老時宗/百合稚錦嶋/謡曲百万車/義貞艶軍配/義経風流鑑/善光倭丹前/吉原一言艶談/頼朝鎌倉実記/頼朝三代鎌倉記/頼信璍軍記/頼政現在鵺/万の文反古/
【ら】
立身銀野蔓/立身大福帳/略縁記出家形気/恋慕水鏡/
【わ】
和漢乗合船/和漢遊女容気/分里艶行脚/渡辺秘鑑/椀久一世の物語/椀久二世の物語

4 資料編
挿絵画像補遺
浮世草子年表

5 索引編
挿絵キーワード索引〈カテゴリー別〉
挿絵キーワード索引〈五十音順〉
難読書名索引

前書きなど

【推薦】

この大領域を
素通りする事は有り得ない

浜田啓介(京都大学名誉教授)

 浮世草子とは、出版史と関係を持つ刊行小説の様式の名称である。
 江戸時代二百七十年間の小説史の大要は、前期八十年間は仮名草子の時代、宝暦以後幕末に及ぶ後期百二十年間は、何々本という諸様式並存の時代、そしてこの両期の間約七十年間は、浮世草子様式独走の時代である。
 浮世草子の作品数は、本事典の立項作品五一九点(本書年表記載数五三五点)である。近世文学に関心を持つ者で、この時代、この大領域を素通りする事は有り得ない。にもかかわらずこの領域は、従来文学史上の知見の、総合・集約・解説の仕事がなされていなかった。今ここにその多年の懸案が果たされた事を、近世文学関心者の一人として喜ぶ者である。
 編集委員の方々は此の領域に業績を遺して来られた第一線の研究者たちであり、本事典の作成が、近世文学の学界・学会に関わる大きな仕事である事を示す。さればこそこの困難な仕事の実現が可能であった事が知られる。
 全作品の梗概が提示されたという事は、近世文学関心者にとって、筆紙に尽し難い程有難い事なのだ。それだけでも本書は身辺に有ってよい。そして私は、資料編の挿絵画像補遺と挿絵キーワード索引を繰返し見る。私はここに、何という多数の興味深い知識に出会った事か。
 私は本事典を、近世文学に関心を持つ研究者・読書人・教養人に推薦する。

【推薦】

すべからく座右に

林 望(作家・国文学者)

 さるにても浮世草子は、難攻不落の山城のようなものであった。じつは私も若い頃には浮世草子の研究に志して、まずは残存伝本の書誌学的調査に力を尽した。が、江戸時代中期を代表する大ジャンルであった浮世草子は、それが世に頗る流布したがゆえに大切には扱われず、結果的に伝本は少なく、各地に散在していて訪書調査は容易ならぬ仕事であった。しかも各作品五巻ほどのヴォリュームがあるから、写真に撮ることも費用がかかり、翻刻本も影印本も殆どなかったために、その全貌を把握することすら難しかった。
 しかし、いまこの事典の完成によって、状況は一変したと言うべきである。浮世草子全体を俯瞰し、ジャンルとしての総体や各作品の大概を窺い知るばかりでなく、社会・風俗史的研究に「絵引き」として利用できるようになっているのも、まことにありがたい。
 この故に、江戸文学史を再構築するための一里塚として、また文学研究者に留まらず、言語、演劇、風俗、社会、美術等々、さまざまの分野の研究にとってすこぶる有益な業績であることは言を俟たぬ。されば、各方面の研究者諸氏のすべからく座右に備うべき一書である。

【推薦】

歴史研究の
豊かな発展のために

氏家幹人(歴史学者)

 江戸時代の社会と風俗、とりわけ多様な性愛や武士の習俗などを研究対象とする私のような歴史学者にとって、浮世草子は、陳腐な表現だが史料の宝庫である。文学作品なので厳密な意味で史実ではないが、そこに当時の様々な人々の生態や社会の有様がいきいきと記されているからだ。たとえば『近士武道三国志』は、自ら腹を切って遺族が恨む相手に切腹を迫る〝さし腹〟の事例を紹介しているし、『けいせい伝受紙子』には衆道(男色)の兄分の遺族を弟分が〝もうひとつの家族〟として援助する話が。前者は武士道の古層を伝え、後者は衆道が家族ぐるみの互助的な役割を帯びていたことを教えてくれる。
 例を挙げればきりがない。『好色十二人男』では、少年に姿を変えて恋する男を誘う女性が登場。男はやがて女の色に耽溺するようになる。男色から女色へ移行する元禄の世相が垣間見え、いわゆる古文書や古記録には記されていない性愛の微妙な変化が読み取れるのである。
 本書は序文で「浮世草子研究の粗漏は近世文学史の理解にも大きい穴をあける事になる」と述べているが、歴史研究の豊かな発展のためにも浮世草子はもっと読まれなければならない。『浮世草子事典』を推薦するゆえんである。

著者プロフィール

長谷川 強(ハセガワ ツヨシ)
国文学研究資料館名誉教授。『大東急記念文庫善本叢刊』(共編、汲古書院)、『八文字屋本全集』(監修、汲古書院)、『近世文学考』(汲古書院)、『西鶴をよむ』(笠間書院)、『浮世草子の研究』(おうふう)、『浮世草子新考』(汲古書院)。
『浮世草子大事典』編集委員会(ウキヨゾウシダイジテンヘンシュウイインカイ)
江本 裕(えもと・ひろし)大妻女子大学名誉教授
神谷勝広(かみや・かつひろ)同志社大学教授
倉員正江(くらかず・まさえ)日本大学教授
佐伯孝弘(さえき・たかひろ)清泉女子大学教授
篠原 進(しのはら・すすむ)青山学院大学教授
杉本好伸(すぎもと・よしのぶ)安田女子大学名誉教授
中嶋 隆(なかじま・たかし)早稲田大学教授
藤原英城(ふじわら・ひでき)京都府立大学教授

追記

本書のパンフレットはこちら(PDF)

上記内容は本書刊行時のものです。

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