岩佐美代子セレクション 1
岩佐美代子セレクション1 枕草子・源氏物語・日記研究
岩佐 美代子(著)
A5判 336頁 上製
定価 10,000円+税
ISBN 978-4-305-70764-2 C0095
在庫あり
奥付の初版発行年月 2015年03月 書店発売日 2015年04月03日 登録日 2015年03月10日
解説
物語・日記文学の面白さを新たに照らす、珠玉の一冊。古今変わらぬ人間の感性に注目した、平成13年から26年に至る14年間に発表の既刊研究書に未収録の、文章表現への探究が生んだ論文を集成。
紹介
物語・日記文学の面白さを新たに照らす、珠玉の一冊。古今変わらぬ人間の感性に注目した、平成13年から26年に至る14年間に発表の既刊研究書に未収録の、文章表現への探究が生んだ論文を集成。
物語・日記文学の面白さを新たに照らす、珠玉の一冊。
古今変わらぬ人間の感性に注目し、言葉を紡ぎあげた清少納言は、『枕草子』の中に何を表現したのか。
華やかさや儚さを持ち合わせた『源氏物語』の裏に紫式部が描きたかった人の世とは。
平成13年から26年に至る14年間に発表した、既刊研究書に未収録の、文章表現への探究が生んだ論文を集成。
【京極派が好きで研究ははじめましたものの、『源氏』も好き、『枕』も好き、それに連なる女流日記から、更に漢文日記へと、とにかく考えた事を書くのが楽しく、または機会とテーマを与えられて、思ってもいなかった所から新たな発見をするのが楽しく、女子学習院高等科時代、久松潜一先生に提出した幼い永福門院論以来七十年、悲しい、苦しい場合にも、常に文学とその研究に支えられて生きてまいりました。つくづく、ありがたいと思っております。……「はじめに」より】
目次
はじめに
凡例
清少納言から紫式部へ―二一世紀初頭に一一世紀初頭を思う
【枕草子】
女はた、知らず顔にて―枕草子解釈考
一 解釈の現状/二 「知らず顔」考/三 「男を打つ」事/四 まとめ
『枕草子』「……物」章段考察
はじめに/一 「……物」章段概説/二 内容・性格各論/三 「……物」章段成立考/四 成立の意義と文学的成果
汗の香すこしかゝへたる
【源氏物語】
最高の№Ⅱ 頭中将
一 若き日の二人/二 政治的関係推移/三 子らをめぐる葛藤/四 柏木事件/五 葛藤の終焉
頭中将と光源氏
はじめに/一 天皇―系のみある抽象的存在/二 藤原北家の権威―神代の約諾/三 平安時代の階級観念/四 頭中将と光源氏
二人の命婦
一 命婦というもの/二 王命婦/三 大輔命婦
二人の中将の君
はじめに/一 中将の君―六条御息所女房/二 中将の君―源氏・紫上女房/おわりに
二人の侍臣・二人の侍女
はじめに/一 惟光と良清/二 右近と侍従/おわりに
『源氏物語』の涙―表現の種々相
はじめに/一 涙ぐむ/二 流る/三 ほろほろ/四 こぼる・こぼす/五 浮く・浮け/六 まろがれたる髪/七 よよと/八 俗語的表現/おわりに
『源氏物語』最終巻考―「本に侍める」と「夢浮橋」と
一 「本に侍める」研究史/二 物語の始めと終り/三 最終巻名「夢浮橋」/四 各帖の終り方/五 「本に侍める」再考/おわりに
屏風の陰に見ゆる菓子盆
花や蝶やとかけばこそあらめ
対談 物語読解の楽しみ―行幸・藤袴巻の魅力〈岩佐美代子・石埜敬子〉
巻の位置/源氏と藤原氏/老女の造型―大宮/内大臣との対話/親子の対話―夕霧の成長/玉鬘の恋/玉鬘という女性
* * *
朗詠享受に見る『枕草子』『源氏物語』
一 「朗詠」とその享受文化/二 『枕草子』における享受/三 『源氏物語』における享受/四 享受相の成果と相違点、その由来
【日記研究】
池田亀鑑先生におじぎ
寅彦日記と私
『たまきはる』考―特異性とその意義
はじめに/一 建春門院後宮/二 八条院後宮/三 春華門院後宮/四 成立と意義
『弁内侍日記』の「五節」
一 女流文学中の「五節」概観/二 当記「五節」の様相/三 当記五節享受の意義/四 喜劇性の意義
よとせの秋―中務内侍日記注釈訂正
『実躬卿記』ところどころ
『花園天皇宸記』と『徒然草』
『花園天皇宸記』読解管見
『花園天皇宸記』の「女院」
一 人物比定上の問題点/二 比定根拠要件と実例/三 女院名比定一覧表/四 結語
『方丈記』と『断腸亭日乗』と
臨場感の魅力―複製『花園院宸記』の意義
そりゃ聞えませぬ
初出一覧
和歌一覧
研究者名索引
作品名索引
前書きなど
「はじめに」より
昭和五十七年(一九八二)、鶴見大学助教授として御採用いただいた時、池田利夫先生から、「あなたを採ったのは学生の指導もだが、研究がしてほしいからだ。論文を書いて下さい」とおっしゃっていただきました。長年、どこの機関にも所属せず、論文の発表場所に苦労していた私は本当に嬉しく、以後平成九年(一九九七)退職まで、「国文鶴見」「鶴見大学紀要」に毎年欠かさず書き続けてまいりました。また年を経るに従って、お求めをいただいたり、自発的に投稿したりして、論文やら雑文・戯文やら、積り積ってかなりの数になりましたので、ここに二冊にまとめました。
京極派が好きで研究ははじめましたものの、『源氏』も好き、『枕』も好き、それに連なる女流日記から、更に漢文日記へと、とにかく考えた事を書くのが楽しく、または機会とテーマを与えられて、思ってもいなかった所から新たな発見をするのが楽しく、女子学習院高等科時代、久松潜一先生に提出した幼い永福門院論以来七十年、悲しい、苦しい場合にも、常に文学とその研究に支えられて生きてまいりました。つくづく、ありがたいと思っております。
拾い集めた諸論を見ますと、実に雑然として我ながら呆れるばかりでございますが、その中から『枕』『源氏』及び文学的・記録的諸日記にかかわるものによって、一冊を構成致しました。思えばこれらの作品に魅せられましたその心の根底には、幼女、少女の十数年間、自分のすべてを捧げて、名実ともに昭和の最高貴女、照宮成子内親王に奉仕してまいりました経験がございます。私的な体験を客観的科学的なるべき研究論文中に根拠として言及する事は如何かとも思われますが、近代的自我自尊とは異なる、しかし決して卑屈追従ではない、宮仕え人の無私の真心というものを、現代の科学的研究者の方々にもわかっていただきたく、あえて数回にわたり論拠として示しました事をお許し下さいませ。
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凡例
一、平成十三年から二十六年に至る十四年間に発表した論文中、既刊研究書に未収録のものをもって構成した。
一、執筆期間が長期にわたるため、以後の諸家の研究成果により、また全体的な形態の統一をはかって、若干の改訂を行った。
一、その他、偶ま機会を与えられて書いた、研究にかかわる雑文をも収録した。これらは戯文のようでもあるが、私にとっては正規の研究論文を補完すると共に、文学そのものに対する私の考えを知っていただく意味で、論文と同等の価値を持つものである。気楽なインターバルとして読み捨てつゝ、その中に何等かの示唆を感得していただければ、望外の幸いである。
一、論中、各人物の年齢は考察上重要な因子の一と考えるので、目立つよう算用数字で表示した。
一、引用各論の発表年次は、発表時のイメージが端的に思い浮べられるよう、西暦でなく元号で示した。
一、主要作品の引用底本は次の通りである。その他諸作を含め、表記は読みやすさを宗として私意によった所が多い。
・和歌『新編国歌大観』(昭58〜平4、角川書店)
・枕草子 渡辺実校注『枕草子』(「新日本古典文学大系」平4、岩波書店)
・源氏物語 阿部秋生・秋山虔・今井源衛・鈴木日出男校注・訳『源氏物語』(「新編日本古典文学全集」平6〜10、小学館)
・たまきはる 三角洋一校注『とはずがたり たまきはる』(「新日本古典文学大系」平6)
・弁内侍日記 岩佐校注『中世日記紀行集』(「新編日本古典文学全集」平6)
・中務内侍日記 岩佐『校訂 中務内侍日記全注釈』(笠間書院、平18)
・花園天皇宸記『増補史料大成2・3』(臨川書店、昭40)
著者プロフィール
岩佐 美代子(イワサ ミヨコ)
大正15年3月 東京生まれ。昭和20年3月 女子学習院高等科卒業。鶴見大学名誉教授。文学博士。著書に『京極派歌人の研究』(笠間書院 昭49年)、『あめつちの心 伏見院御歌評釈』(笠間書院 昭54年)、『京極派和歌の研究』(笠間書院 昭62年)、『木々の心 花の心 玉葉和歌集抄訳』(笠間書院 平6年)、『玉葉和歌集全注釈』全四巻(笠間書院 平8年)、『宮廷に生きる 天皇と 女房と』(笠間書院 平9年)、『宮廷の春秋 歌がたり 女房がたり』(岩波書店 平10年)、『宮廷女流文学読解考 総論中古編・中世編』(笠間書院 平11年)、『永福門院 飛翔する南北朝女性歌人』(笠間書院 平12年)、『光厳院御集全釈』(風間書房 平12年)、『宮廷文学のひそかな楽しみ』(文藝春秋 平13年)、『源氏物語六講』(岩波書店 平14年)、『永福門院百番自歌合全釈』(風間書房 平15年)、『風雅和歌集全注釈』全三巻(笠間書院 平14・15・16年)、『校訂 中務内侍日記全注釈』(笠間書院 平18年)、『文机談全注釈』(笠間書院 平19年)、『秋思歌 秋夢集新注』(青簡舎 平20年)、『藤原為家勅撰集詠 詠歌一躰・新注』(青簡舎 平22年)、『岩佐美代子の眼 古典はこんなにおもしろい』(笠間書院 平22年)、『竹むきが記全注釈』(笠間書院 平23年)、『讃岐典侍日記全注釈』(笠間書院 平24年)、『和泉式部日記注釈[三条西家本]』(笠間書院 平25年)などがある。 上記内容は本書刊行時のものです。
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