『源氏物語』アイロニー詩学 玉鬘十帖の語り
松山 典正(著)
A5判 240頁 上製
定価 5,500円+税
ISBN 978-4-305-70760-4 C0093
在庫あり
奥付の初版発行年月 2015年02月 書店発売日 2015年03月04日 登録日 2015年02月13日
解説
玉鬘と源氏、二人の関係を「アイロニー」という概念をふまえて先行研究を読みかえる。『源氏物語』へ理論を当てはめるのではなく、読みの更新の手段として、物語と理論との往還から理論そのものをとらえ直す。
紹介
玉鬘と源氏、二人の関係を「アイロニー」という概念をふまえて先行研究を読みかえる。『源氏物語』へ理論を当てはめるのではなく、読みの更新の手段として、物語と理論との往還から理論そのものをとらえ直す。
玉鬘と源氏、二人の関係を「アイロニー」という概念をふまえて先行研究を読みかえる。
『源氏物語』へ理論を当てはめるのではなく、更新の手段として物語と理論との往還が必要とされる。そのため、「源氏物語から」理論そのものをとらえ直す試みとして本書はある。
本書は、玉鬘の姫君が六条院世界を自らの論理によってどのように相対化し、かつ能動的な物語として生きるのかに焦点を当てる。第一章では成立論を参照し、玉鬘を中心とした物語の読みについて確認する。また、玉鬘の六条院入りに焦点を当て、女君の側から物語をとらえ直す。第二章では、右近や花散里といった端役に注目し、玉鬘との関係において物語にどのような影響をもたらすのかを考察する。第三章では、玉鬘十帖の語り手に着目し、叙述構造の位相において物語がどのように描かれるのかを考える。
【 成立過程論は、主題論へと発展して後の読解へ大きな影響を与えたが、今日、あまり顧みられない。玉鬘十帖という一群や、それに含まれる各巻について考察しようとすると、玉鬘系と呼ばれる巻々を意識しないわけにゆかない。本書は玉鬘十帖の研究史を見直すために、『源氏物語』における一九四〇年代から五〇年代初頭に書かれた成立過程論を追う所から始まる。
玉鬘系の指標人物である、玉鬘の女君は、「真木柱」巻で髭黒の大将との婚姻関係が明らかにされたあと、「若菜」上・下巻以下の物語に登場する。「若菜」上・下巻、「柏木」、「紅梅」、「竹河」、「宿木」巻を、玉鬘系の巻々と見なしてよいのではないか。そのような新しい視野が用意されつつある今日であり、玉鬘の女君をめぐる物語の行方を追尋する上で、第二部以後の成立過程問題と無関係でありえない。今後の課題は大きくかつ広い。】…「あとがき」より
目次
凡例
前提となる事柄
第一章 玉鬘十帖の「筋」
第一節 「帚木」三帖から「玉鬘」十帖へ―成立論について
一 紫上系と玉鬘系
二 成立論に対する批判
三 主題論への展開
第二節 三稜の筋
一 和歌の贈答
二 「三稜」について
三 玉鬘へ連なる「筋」
四 母の導き
第三節 玉鬘とヒルコ伝承
一 「玉鬘」巻のヒルコ伝承
二 『源氏物語』におけるヒルコ伝承の引用
三 「親」という叙述をめぐって
第二章 端役たちの活躍
第一節 玉鬘をめぐる夢の役割
一 筑紫への下向
二 夕顔の乳母について
三 『源氏物語』における死者が現れる夢
四 玉鬘の女君と夕顔とをつなぐ夢
第二節 夕顔の右近の考察
一 右近の心内描写
二 夕顔・玉鬘親子の媒介
三 右近と源氏とのずれ
四 視点人物としての役割
五 右近の欲望
第三節 花散里の後見としての役割
一 花散里の後見
二 花散里という女
三 後見について
四 玉鬘に対する花散里の役割
第四節 六条院入りにおける市女の活躍
一 「玉鬘」巻の市女
二 「玉鬘」巻の「市」
三 玉鬘をめぐる贈与と交換
第三章 玉鬘十帖における語りと叙述の方法
第一節 「初音」巻の考察
一 「初音」巻、源氏と紫の上との贈答歌について
二 「須磨」巻の贈答歌との関係
三 紫の上と玉鬘
第二節 語り手のアイロニー
一 「初音」巻の語り手評
二 歴訪における玉鬘と紫の上
三 語り手について
四 「南の御方」と和琴
五 語り手評の機能
第三節 玉鬘十帖における語り手の評言
一 「蛍」巻の語り手
二 蛍の宮について
三 源氏と蛍の宮
四 語り手の役割
第四節 「篝火」巻論―「恋のけぶり」をめぐって
一 「篝火」巻の贈答歌
二 「恋」の意味
三 夕顔をめぐる「恋」
四 「真木柱」巻の恋
引用文献を含む参考文献一覧
あとがき
索引
著者プロフィール
松山 典正(マツヤマ ノリマサ)
1980年、静岡県浜松市生まれ。立正大学大学院文学研究科国文学専攻博士課程修了。博士(文学)。現在、立正大学文学部助教。専攻、平安文学。 上記内容は本書刊行時のものです。ご注文方法
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