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かくして『源氏物語』が誕生する 物語が流動する現場にどう立ち会うか

荒木 浩(著)

A5判  408頁 上製
定価 3,900円+税
ISBN 978-4-305-70727-7 C0095
在庫あり

奥付の初版発行年月 2014年03月
書店発売日 2014年03月17日
登録日 2014年02月12日

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解説

『源氏物語』。それは、日本の文学が遭遇した、画期的かつ最大級の文学史上の一コマであった。『源氏物語』という驚嘆すべき新しい創造の試みは、いかになされたのか。刺激に満ち溢れる『源氏物語』論。

紹介

『源氏物語』は日本の文学が遭遇した画期的かつ最大級の文学史上の一コマであった。驚嘆すべき新しい創造の試みの内実を解き明かす。

『源氏物語』。それは、日本の文学が遭遇した、画期的かつ最大級の文学史上の一コマであった。『源氏物語』という驚嘆すべき新しい創造の試みは、いかになされたのか。本書は、寓意や准拠といった観点を軸に、史書、説話、漢詩文、仏典など、様々な外部テクストを本文と対比して、作品世界に分け入り、中世的視界から『源氏物語』の内部世界を照射し、その内実を明らかにする。刺激に満ち溢れる『源氏物語』論。

【テクストに翻弄された中世以前の読者は、本文とのインタラクティブを、すべて作者の手の中に帰着して、解消する。伝承に依拠して出発し、匿名の語り手を装う物語において、本質的な意味で、ここにはじめて〈作者〉が誕生する。読者もまた、生まれ変わらずにはいられない。まるで経典に対するように、本文に注釈を施したり、作者は何が言いたいのかと、問いかけたりするのである。挙げ句の果てに、ストーリーテラーの罪を背負って苦しみ、源氏供養を求める亡者「紫式部」までも仮構する…。作者、語り手、読者。今日ではあたりまえの構造認定が、こうして自然に達成される。】…はじめにより

目次

はじめに 源氏物語論へのいざない



第一章 玄宗・楊貴妃・安禄山と桐壺帝・藤壺・光源氏の寓意
 はじめに
 1 信西「長恨歌絵」の寓意
 2 帝王の寵愛―安禄山と信頼と
 3 安禄山・楊貴妃密通説の発生と白居易『胡旋女』
 4 『長恨歌』の前提と「新楽府」的楊貴妃―『源氏物語』へ
 5 二人の楊貴妃と『源氏物語』創造
 6 安禄山・楊貴妃と光源氏・藤壺の対応
 おわりに―まとめと展望

第二章 武恵妃と桐壺更衣、楊貴妃と藤壺―桐壺巻の准拠と構想
 はじめに
 1 『源氏物語』と白河院・後鳥羽院
 2 『源氏物語』に依拠して描かれる史実と『長恨歌』の関係
 3 桐壺巻准拠の重層性
 4 藤壺の准拠としての楊貴妃―父と子と
 5 〈貴妃〉と〈妃〉と―楊貴妃と藤壺
 6 准拠の仕組みと構想―おわりにかえて

第三章 〈北山のなにがし寺〉再読―若紫巻をめぐって
 1 問題の所在―北山への旅
 2 研究史概観
 3 角田文衛の大雲寺説
 4 大北山・西園寺あたりを指すとする説その1
 5 大北山・西園寺あたりを指すとする説その2―公季説話の周辺
 6 通底するもの―拭いがたい鞍馬寺の像
 7 新出『鞍馬縁起』と鞍馬寺像の再構築
 8 鞍馬寺の『縁起』再読と「北山」
 9 いくつかの問題と角田説再考―おわりにかえて

第四章 胡旋女の寓意―紅葉賀の青海波
 1 問題の所在―楊貴妃・安禄山密通説と『源氏物語』
 2 『胡旋女』をめぐって
 3 『源氏物語』の音楽と交情
 4 紅葉賀の青海波演舞とその底意
 5 青海波のコンテクスト
 6 物語の外側へ―史実化する『源氏物語』青海波

第五章 胡旋舞の表象―光源氏と清盛と
 1 『政範集』と「新楽府」そして『源氏物語』
 2 『胡旋女』と「廻雪」・「雪をめぐらす」の周辺
 3 「廻雪」の典拠
 4 『胡旋女』の寓意と青海波
 5 『胡旋女』から彷彿する青海波の形象
 6 清盛と光源氏の重なりと両義性



第六章 〈非在〉する仏伝―光源氏物語の構造
 1 桐壺巻の予言
 2 予言の「三国」的仕組み―高麗人をめぐって
 3 『源氏物語』の内なる仏伝
 4 仏伝の予言と文脈
 5 予言に続く仏伝の要素と『源氏物語』の類似点
 6 釈迦の多妻(polygamy)伝承と三時殿
 7 四方四季と六条院
 8 仏陀の反転としての光源氏
 9 光源氏物語とその後―不在の人



第七章 宇治八の宮再読―敦実親王准拠説とその意義
 1 宇治八の宮という呼称
 2 『源氏物語』本文と「八の宮」呼称出現箇所の問題―敦実親王准拠説へ
 3 「八の宮」の准拠説について
 4 八の宮と音楽および宇治
 5 八の宮をめぐる出家と栄達
 6 敦実親王と皇位継承への思い
 7 『源氏物語』という創作へ

第八章 源信の母、姉、妹―〈横川のなにがし僧都〉をめぐって
 1 なにがし僧都の登場と恵心僧都源信
 2 二つの准拠―源信の母と妹
 3 安養尼説話と『源氏物語』
 4 源信の姉と妹―安養尼蘇生説話の起源
 5 源信伝の仕組みと安養尼という収斂
 6 初期源信伝の推移と母の役割
 7 僧伝と母―『源氏物語』の結構

  あとがき―「圏外の源氏物語論」始末記
  初出一覧
  凡例にかえて

著者プロフィール

荒木 浩(アラキ ヒロシ)
1959年生まれ。京都大学文学部卒、同大学院文学研究科博士後期課程中退。博士(文学)。大阪大学教授などを経て、現在、国際日本文化研究センター教授・総合研究大学院大学教授。
専門分野:日本古典文学。
主要著書:『説話集の構想と意匠 今昔物語集の成立と前後』(勉誠出版、2012年)、『日本文学 二重の顔 〈成る〉ことの詩学へ』(大阪大学出版会、2007年)、新日本古典文学大系41『古事談 続古事談』(岩波書店、川端善明と共著、2005年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

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