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秀吉の対外戦争:変容する語りとイメージ 前近代日朝の言説空間

井上 泰至(著) / 金 時徳(著)

四六判  288頁 並製
定価 2,000円+税
ISBN 978-4-305-70551-8 C0020
在庫あり

奥付の初版発行年月 2011年06月
書店発売日 2011年06月21日
登録日 2011年05月26日

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紹介

日朝双方の記録の誤読。意図的な改変、改竄。
娯楽としての戦争物語。ステレオタイプな悪人像--。
東アジアの国際戦争についての記憶の変遷は、我々に何を語るのか?

秀吉の朝鮮攻略である【文禄・慶長の役[日本]/壬辰倭乱[韓国]】は、江戸時代から日清戦争にいたるまで、どのように日本と韓国で語り継がれてきたのか。
この戦争の言説の中心となった、軍記・軍書の実態を整理・俯瞰し、史学・思想・絵画・演劇・近代小説といった多様な分野との関連・影響・展開を視野に入れ検討する。現在もなお、日韓関係に影を落とす、秀吉の戦争についての記憶の根拠を発掘していく。

民族主義の前提を問い直し、歴史解釈の共有の可能性を探る書。日本と韓国の軍記研究者による共同執筆。

目次

序(井上泰至)

1●東アジア版「正しい」戦争の語り方
「異国征伐」という思想を読み解く
(金時徳)
はじめに/壬辰戦争文献群の展開/対外戦争文献群における「征伐」の正当化--「攻撃の論理」と「防御・反撃の論理」--/おわりに/

2●戦争の言説はこうして生みだされる--引用とバイアス
中国・韓国の資料をどのように利用したのか
(金時徳)
はじめに/『朝鮮征伐記』と『豊臣秀吉譜』との間隙/明の文献と日本の文献との間隙/おわりに

3●「教育」のために改変される軍学・軍談テキスト
宇佐美定祐『朝鮮征伐記』を読む
(井上泰至)
紀州藩軍学者宇佐美定祐/軍談色1--長口舌の魅力・「実は」の話法/軍談色2--カリスマのイメージ・英雄への同情/平時の管理者に求められる英雄像/非文学的側面/御伽衆的軍学者から理論的な軍学者へ

4●娯楽と教訓として成立する歴史読み物
馬場信意『朝鮮太平記』を読む
(井上泰至)
豊富な情報/対外認識と自国認識/人物中心の歴史/結語

5●諜報活動から朝鮮にもたらされた『撃朝鮮論』
情報収集径路の謎
(金時徳)
はじめに/『撃朝鮮論』の成立事情/『撃朝鮮論』の表記文字/『撃朝鮮論』の成立時期/『撃朝鮮論』の系統/『撃朝鮮論』の執筆姿勢と史観/朝鮮への将来/朝鮮内の流布とその学術史的な意義/おわりに

対談●本書のテーマは何か
(井上泰至×金時徳)
1 戦争物語の悪役/2 戦争の時代と語られた時代/3 日本と朝鮮における 書物の位置づけの違い/4 ステレオタイプの怖さ/5今、韓国から文禄・慶長の役の物語を研究する意味/6 垂直思考--東アジア的価値観/7 この戦争が書き継がれた理由/8 絵本の意義/9秀吉--活力ある町大阪の英雄/10 歴史を読む態度--「逆説」と「複眼」

6●朝鮮で加藤清正言説はどのように享受されたか
済州に漂着した「日本人」世流兜宇須は誰か
(金時徳)
はじめに/『碩齋稿』巻九「海東外史・朴延」条の検討/加藤清正文献群と『和漢三才図会』巻五十六「山類・富士山」条/おわりに

7●成熟していく歴史読み物
石田三成は英傑か、悪人か
(金時徳)
はじめに/『絵本太閤記』における二夫人の葛藤構図と、悪人としての石田三成/『慶長中外伝』における二夫人の葛藤構図と、英傑としての石田三成/おわりに

8●転化していく戦争のイメージ
絵入軍記・絵本読本は何を語るか
(井上泰至)
対外戦争をめぐるイメージ/蓄積された情報の可視化--絵本読本というジャンルの意味/「長袖国」朝鮮との対比--「武国」の自己イメージ/英雄像の確定--加藤清正/ナショナル・シンボルとしての富士--満州からの眺望/古代の復活/結語

9●「復古」と「維新」はどう意味づけられていくか
幕末の武家説話から見える歴史認識
(井上泰至)
決起を促す歴史--天狗党の檄文から/英雄待望と東アジアへの視線/外交ブレーン者の評価の変化/士道の再生への渇望/正戦論への展開/征伐論の前提/征韓論の理念化/思想の行方/

10●重ね合わされていく戦争のイメージ
日清戦争期の歴史小説
(井上泰至)
新聞小説家村井弦斎/あらすじ1--英雄の活躍とロマンス/あらすじ2--戦争の展開・英雄と妻の苦難/あらすじ3--再戦と家族の別れ/主人公の背負うイメージ/現実の戦争との重ねあわせ/戦争の正義/結語

あとがき(金時徳)

本書関連年表

【カバー図版】
楊斎延一(ようさい・のぶかず)画 
明治26年(1893) 「加藤清正朝鮮ヨリ富士ヲ望ム」
名古屋市秀吉清正記念館蔵
●文禄の役で、加藤清正はオランカイ(中国東北部、ロシア国境付近)まで攻め入ったが、そこで富士を望見したという説話が、江戸時代に流布し、結果として旧来の国見の文脈から、富士の見える地域は、日本の領域となるべき地であるという認識を一般に広めるのに寄与した。この絵の刊行は日清戦争の前年に当たる。

著者プロフィール

井上 泰至(イノウエ ヤスシ)
1961年、京都市生まれ。上智大学文学部国文学科卒。同大学院文学研究科国文学専攻博士後期課程単位取得満期退学。現在、防衛大学校人間文化学科准教授。
【著書】
『雨月物語論--源泉と主題』(笠間書院、1999)、『サムライの書斎--江戸武家文人列伝』(ぺりかん社、2007)、『江戸の恋愛作法』(春日出版、2008)、『〈悪口〉の文学、文学者の〈悪口〉』(新典社、2008)、『雨月物語の世界 上田秋成の怪異の正体』(角川選書、2009)、『恋愛小説の誕生--ロマンス・消費・いき』(笠間書院、2009)、『春雨物語 現代語訳付き』(角川ソフィア文庫、2010)など。
金 時徳(キム シドク)
1975年、韓国ソウル生まれ。高麗大学日本文学科の学部・大学院(博士課程修了)・非常勤講師を経て、2010年に国文学研究資料館(総合研究大学院大学)で博士号を取得。現在、高麗大学日本研究センターHK研究教授。専門は日本近世文学・日本文献学・戦争史。
【著書】
単著に、『異国征伐戦記の世界‐韓半島・琉球列島・蝦夷地』(笠間書院、2010)、『江戸人の壬辰戦争』(学古斎、2011)。共著に、『読本【よみほん】事典 江戸の伝記小説』(笠間書院、2008)、『壬辰倭乱関連日本文献解題 近世編』(図書出版文、2010:2010年度韓国文化体育観光部優秀学術図書)、『中世の軍記と歴史叙述』(竹林舎、2011)など。

上記内容は本書刊行時のものです。

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